昼間は乾いた暑さ、夜は今日も涼しい。このまま夏が去ることを想像して目を瞑ると、想いは祈りに変わり、涙が滲む。人心を破壊する熱風、幾度拭えども噴き出してやまぬ、魂の悪しき属性としての汗。近鉄S駅前に蔓延る大学生の、痴呆じみた酩酊、蛮声、色欲に暴かれ続けるなりすまし証券マンの糜爛した宗教、P町を縺れ漂うコーカソイド系ハーフのヤクザと、彼が昨日セリ落としたばかりのプッシャーの少女。彼女の手の中のプラダのシガーケースとi-pod。これら大学生の、なりすまし証券マンの、ヤクザの、少女の、爪と髪と皮脂の放つ悪臭。昭和の絞り滓の売春宿から這い出て、ネットカフェに向かうゴキブリと誘蛾灯の明滅。それらの放つ悪臭。K川べりに打ち捨てられ腐ったビーチサンダルと、ダイエットコークの空き缶に入ったトルエン、それら一切の放つ、権力じみた悪臭!それが、僕にとっての夏だ。