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大野木一彦のJOURNAL・ブルースハープ・ライブ・レッスン情報

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2008年 04月 10日

JOURNAL

夜、外で夕飯をとっていたら、若い友人から電話が入った。僕の周りが騒々しく、ゆっくり話せないと判断したようで、彼は手短に用件だけ伝えた。小川国夫氏の訃報だった。小学校時分から本ばっかり読んできて、音楽の方に来てからも本がない暮らしは想像も出来ない。実際、音楽がないほうがいくらか自然な気がするほどだ。その中で何人かの作家に僕は激しく揺さぶられ、大きく影響された。その筆頭が小川国夫だった。ページを開いた瞬間に目に入ってくる字面にまず強烈な個性がある。そんな作家はそれまで知らなかった。一度傾倒が嵩じて自宅に電話したこともあり、ご本人は留守で(何時間もかけて散歩をし、そのまま飲みに出かけて朝まで、という暮らしを老年になっても続けておられた)奥様が出られて、少しお話をした。結局お会いする夢は叶わなかったが手紙も書いたし、自宅付近の蓮華寺池のほとりまで旅して何時間もその著作を読みながらベンチで過ごしたこともある。若い時だが、もっと理解したいと思っていた。そこにはまだまだ未知の何かがあると、それだけは感知していたのだと思う。ネットが今ほど普及する前は、大阪や京都の古本市、時には東京まで行って氏の絶版本を探し回った。出版された著作はほぼ読んだが、読めていないものもある。晩年に書かれた「星月夜」は雑誌掲載時に読んで、すぐに切り取って今もたまに読み返すが本にはなっていない。最晩年まで書き継がれた連作は未完になったはずだが早く出して欲しい。一言一句覚えこむつもりで読みたいと思う。まさに不世出の才能で、継ごうにも誰にも真似できない世界を拓いた。大井川流域の曇った夜明けに、に、ギリシャのくすんだ陽光の下に彼がおいて見せた、現実と幻が煌きながら交錯する宇宙に僕はこの先も感化され続けるだろう。

by nogioh | 2008-04-10 13:03


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