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大野木一彦のJOURNAL・ブルースハープ・ライブ・レッスン情報

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2011年 12月 06日

JOURNAL

底冷えの京都で、風邪をひきそうでひかない危ういバランスで暮らしている。炬燵に入って煙草を吸うと心が落ち着く。しかし煙草は近々やめるつもりでいる。つもり?
レッスン。1週間後の知人のライブに急遽出ることになり、そこでノートン・バッファローが、かつてボニー・レイットのバックでやった面白いパフォーマンス込みのハーモニカに挑まねばならなくなったという。ご存知の方も多いであろう、4本のハーモニカを次々に持ち替えてゆく、あれです。フレーズ自体複雑だし、そもそもノートンは音色も素晴らしいし、付け焼刃で出来るものではない。とは言ったものの、完コピでなく、フレーズを作って自分なりのものを拵えるのであれば結構面白そうなので一緒に考えることにした。吹くことそのものより持ち替え(どこから出してどこに片付けてゆくか)に相当苦労していて、見ている僕もやっている生徒氏も苦笑い、やがて大笑いしながら練習した。実は僕も随分前になるが、当時レゲエなどもやるバンドを一緒にやっていたベーシストからの「お前、あれ出来るんか」という挑発に乗せられ、ライブ後のセッションの時間にうろ覚えの記憶を頼りにやったことがある。前半はまずまず順調、しかし終盤にハーモニカを落としてしまうという醜態を晒し、苦い記憶となった。
苦い記憶、というと最近徹底して(と言うより聴くとしんどくなる音楽が増えている状態が続いていて自然と)聴き直しているトム・ウェイツの初期の名作「サンディエゴ・セレナーデ」も慟哭、と呼びたいくらいの、苦い苦い悔恨の歌だ。美しい旋律に乗せて若いトム・ウェイツはわりと淡々と歌っているが、何回聴いても何年経っても、歌が流れている間の数秒間は必ず胸掻き毟られる思いにとらわれる。
日本語にすると僕の力では甘ったるくなってしまうので全編訳さないが、「歌を必要とするまで、メロディなど聴いたこともなかった」「頬をつたうまで、君の涙に気付きもしなかった」…この感じ、過ぎ去ったろくでもないことも沢山思い出すし、今在る、この一瞬一瞬も、自分は悔やみながらしか生きられないという、悲観志向が煮詰まって廃人になってしまったような気分になる。そしてその後、結局少しだけ楽になるのだ。

by nogioh | 2011-12-06 23:29


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