レッスン。忙しくエネルギーも結構消耗する日常の中で、いかに音楽に集中できる時間を作り出して行くか、よくそういう話になる。真面目に取り組んでいればこその苦しみで、よく判る。一口に音楽といっても聴いたり、吹いたり歌ったり、色んな事をいっぺんにやらないとなかなか上達しない側面もあるので一層悩ましい。なかなか答えは出ないが、体力的にしんどいなら体を鍛える、気分的に落ち込むなら心も鍛えなければならないだろうし、それでも無理なら何かを日常から殺いで、無理やりにでも音楽に割ける時間を増やすしかないだろう。それぞれ全然違う日常を過ごしながらもみんなそれぞれそうやっているはずだ。若い頃なら時間もあるはず、という考えもあるが、自分の若い頃を振り返るとやっぱりそれなりに忙しかった。若さの特権があるとすれば元気だという事でしょう。色々やることがあるのにそれでも何とか練習時間を拵えられていたのは、僕の場合あまり寝なかったからだ。
夜も更けて、余計なものが増えすぎて収納の限界に差し掛かって久しい部屋をちょっと片付けようと思い立った。昼間やれよという感じだが衝動は時間を選ばない。エルモア・ジェームスを聴きながら書類を整理した。捨て難いものばかりかと思っていたが、夾雑物というのは知らず知らず溜まってゆくもので、ごみ袋が一杯になった。何か思いついたら全部手で書きつけていた頃の名残として手帳とか便箋とか、原稿用紙が山ほど出て来た。また手書きの日々に暫く戻るのもいいな。書き溜めてストックしていた履歴書とかインスタント写真も一杯見つかった。面接に落ちて送り返されて来た会社からのものもある。どうして未練たらしく残そうとしたのか。社名を覚えておいていつか火でも放つつもりだったのか。もう思い出せない。畏まって髭も剃った10年以上前の自分の写真を見て「けっ」という思いになりながら片っ端から破り捨てる。