出張レッスン。頭がおかしくなりそうな暑さだ。行き交う人々がみんな凶悪な顔をしているように思える。夏が好きで堪らないと言う人も世界には大勢いるから(実際自分の身辺だけで何人も知っている)、凶悪なのはこの季節を忌む僕の心なのだろう。凶悪な絶望で胸を一杯にして汗だくで悄然と歩みを進める中年男。先日ある人に「にくしみに支えられたるわが生に暗緑の骨の夏薔薇の幹」という塚本邦雄の歌をそえてメールしたらその後返事が来ない。
レッスンはここ何回か苦労しながらリトル・ウォルターのミディアムスローテンポの名曲、名ソロと格闘している。息継ぎがレコードからは聞こえにくいが、おそらく大変巧みで、3番穴ブローの使い方も素晴らしい。創意に満ちて、ストイックな天才だと思う。