クリスマスである。今日は出張レッスンだった。年末の多忙の中、練習不足を反省気味だったが、細かいコピーの修正などすると充実感があった様子で喜んでおられた。何よりです。特に古いブルースの場合、聴き取りは細かくなればなるほど勘というか、「こうした方が吹いていて釈然とする」という得心の濃淡の問題になってくる。だから正しいとは限らないが、続けている内には細かい工夫が自然と体得できる(はずだ)し、そうすれば表現に奥行きが出る。
実は僕は公開して間もない「レ・ミゼラブル」をもう観に行った。それを話すと生徒氏も期待している映画だ、と答え、そこから暫くはリトル・ウォルターから映画の話に逸れた。「レ・・・」は実に素晴らしい作品で、圧倒的だった。アン・ハサウェイは元々巧いが、この映画で本格的な演技派としての評価を完全に不動のものにするだろう。
若松孝二の遺作「千年の愉楽」の話になった後、「以前、みなみ会館で、にっかつロマンポルノの特集ウィークをやっていたのを知ってますか?僕は見逃したんですが」と生徒氏が言った。「ああ。それは観たかったですね」と僕は答えた。僕はまだ小さくて古い物は殆ど観ていないが、チープで退嬰的で音楽的な、独特の「血の通った闇」のリアリティがそこにはきっとあっただろう。それは僕がうんと若かった頃、バブルの最中に耽溺した音楽と文学すべてに共通して流れていたものだ。