目覚ましをかけずに何週間ぶりかで眠り、起きたらざばざばと雨の音がしていて、外に出ると生暖かかった。
段ボールが幾つも玄関に長いこと積み重ねて置いていて邪魔なことこの上なかったが、明日某所に引き取ってもらえることになり車に積み込んで、すっきりしたところで駅に向かう。古い古い友人たちとささやかな忘年会。個人的には割とちょこちょこ会っていてそんなに懐かしい人はいなかったが、何を喋っても問題ない雰囲気はやはり楽で、僕は一杯だけしか飲まなかったが楽しく過ごした。カラオケ行くか、という話になり、僕は多分10年振りくらいになるが、行った。最近の歌はまるで歌えないので、ビリー・ジョエルとか殿様キングスを歌いました。別れ際に一人が「元気でな、体に気を付けてな」と言った。小さい時から知っている連中同士で、これまで先ず出なかった台詞だ。言われて僕は笑ったが、若い時には当たり前だと思っていた健康が、ちょっと気を抜くと損なわれてしまう年になった、その自覚がちょっと酔っぱらった弾みで口をついて出たのかも知れない、と思うと少々切ない気分にもなる。
忘年会の学生でうるさい駅前で割り勘の計算などしていたら、女の子10人くらいのグループに写真を撮って欲しいと頼まれた。触ったことのないスマホを渡され、撮り方を教わったが、僕は間違って彼女たちがまだ集合のポーズもとらないうちにシャッターを切ってしまって、その後改めて撮り直した。「君がまだ後ろ向いてる時に1回押してしもた」と告白すると、学生は「全然問題ないす」と笑顔で答えた。何と言うこともない出来事だが、そこはかとない苦い思いは残った。