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大野木一彦のJOURNAL・ブルースハープ・ライブ・レッスン情報

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2013年 03月 08日

JOURNAL

午前中、ちょっと時間が出来たのでギターの三島さんの家にどどっと届いた我々の新しいCDの一部を引き取りに行く。店先で立ち話して、おぼろ豆腐を買って帰った。美味でした。CDは作っている中でデザイナーとのやりとりもあったのでビジュアルイメージは頭にあったが、実際手に取って目で見るとやはり新鮮なものだ。
夜、レッスン。結構、密かに、というか僕も知らないところでライブをやっている人。クロマチックの難しい曲に挑んでいる。難しすぎて僕もたくさん練習しなければとても教えられない。
そしてレッスン代金を貰うのを忘れた。気付いて、しまった、と思ったと同時に、お詫びのメールが来た。まあまあよくある事です。
ウッドストックもの(ザ・バンド、ボビー・チャールズ、ポール・バタフィールズ・ベターデイズ、ジェシ・ウィンチェスター、ジェフ・マルダー、トッド・ラングレン…etc)にはまった頃(22,3歳)、僕は憑かれたように童話ばかり読み漁っていた。楽しい事も多かったが、生まれて初めて就職した頃でストレスは尋常ではなく、現実逃避の要素も多分にあったと思う。しかしそれよりも童話の文体や描かれる情景がウッドストックの音楽にとてもマッチした(その時は深くそう確信していた)のだった。竹下文子が一番好きで、あまり作品の多い作家ではないが、最初の作品集「月とトランペット」は繰り返し読んだ。文章も美しく、読みやすい。それでいて内容的には子供向けとは思えないものも多くて、こういうのも童話なのか、と驚いたものだった。「ポケットの中のキリン」など、本当に素晴らしい。今も手に入るなら是非読んでみてください。
その後、僕はどんどん精神的に荒んでゆき、色川武大、小川国夫、古井由吉、ヴォネガットの小説とつげ兄弟(取り分け弟の忠男さん)の漫画に耽溺した。そして年が経って色んなものが一気に破綻した。仕事も辞めて、本当に辛い日々がやって来た。大江健三郎と哲学書ばかりを来る日も来る日も読み続け、酒を飲んでも一向に眠れず、医者に行って睡眠薬を貰い、それでも眠れない時は、夜中を待って(昼間外に出るのが嫌だった)どこともあてのないまま5時間も6時間も歩き続けた。その頃、土曜日の夜中にルパン三世の再放送をやっていて、それだけは忘れず観ていたのを覚えている。ジャズを聴くようになり、ブルースが一切聴けなくなった。テレビでも本でも音楽でも一つのものに執着し、他を一切受け付けない時は明らかに依存状態なのだ。中毒するという状態です。聴いていた音楽が終わって部屋が静かになると途端に怖くなって震えだす、というような…。その内当然ながら金も尽き、僕は漸く身を起こして肉体労働を始めた。昼間は仕事場の連中と一緒だから比較的まともに食事を摂っていたが、一人で、夜まともに飯を炊いて、ちゃんとした食事をしようとすると、不遜だ、そんな資格はお前にはないともう一人の自分の声が聞こえるようで気分が滅入ってどうにもならない。だから大抵夜は食わない。ふらふらしてどうしても食わねばならない時はたこ焼きを買って七味をかけて外で立って食ったり、布団の中で塩だけをなめていたり。時折弁当を買うことがあっても部屋で卓に座って食ってはいけないという強迫観念があったから店先や車で食う。ついでに布団で寝る資格などなかろう、という事で車で何日も寝たりと、とにかくろくなものではなかった。仕事は色々やった。中国から来るコンテナ(夏は45℃くらいになった)から自転車を延々と下ろし、近畿中の店舗に出荷するための大きなパレットに積み替えたり、マンション用の洗面台を日に10人がかりの完全分業で100台ほど組み立てたり、200キロの鋳物を吊るして専用の台に乗せて研磨窪に送り込んだり、その台から落ちて鋳物を支える鉄の枠の下敷きになり病院に運ばれたり、まあ大変だったが今思うと悪くない日々だった。筋肉がついて体が大きくなるにつれて本当に少しずつだが、思考がまともな方に修正されてゆくのを「カチ、カチ」と音が聞こえるように体感していた。余談だが、僕がネット上で時々使う「Noginogi」という名は、その頃(1年ほど肉体労働から離れ巨大電機メーカーの工場で契約社員になり、積層フィルタという携帯電話用の部品を作っていた期間があった)一緒に働いた一回り年下の女の子からそう呼ばれていたことに由来している。この間、生きるのをやめようと思う事はあってもハーモニカはやめようとは思わなかった。今思うと不思議な気分になるが、ライブはやっていたし、その頃はまだ二人しかいなかった生徒さんのレッスンも続けていた。30歳前後で、本当にどうしようもない人間だったが、親切にしてくれる人が一人もいないという状況にはついにならなかった。音楽も本もあった。そういうのはとても幸運だったのだろう、と思う。そして年齢的、体力的にもそういう暮らしがきつくなり始め、とにかく一つ所に腰を落ち着けてまともに生きたいという欲求が湧く契機が他にもあったりして、吐き気がするほど金がない時など紆余曲折それなりにあったが、一応そういうドロドロに草臥れた日々は終わった。

大野木バンド2ndアルバム「You Can Do」は3月25日発売です。3月20日の拾得では先行発売いたします。みなさま、聴いてください。唐突な宣伝になった。加藤さんも彼自身の酒浸りの日々を回想した日記を書いておられたが、ともかく音楽をやめずに続けて来れたからこそ何とかCDも出る訳です。それで、いざ宣伝しようと思ったら、嫌な記憶が奔流のように頭を満たしてしまい、一応記しておこうと思って書き始めたらこんなに長い前置きになってしまった。

by nogioh | 2013-03-08 23:48


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