しんどい日々だが、そう大変でもないと感じさせる時間が持てるのは幸せな事だと思う。店を予約して飯を食う、例えばそういう非日常の時間とか。
オマー・コールマンのCDをここしばらくよく聴いている。ブラジルの若きブルース・ギターの名手、イゴール・プラドのアルバムで聴いたものが一番良いが、自身のアルバムもよろしい。王道のハープも良いが、歌が素晴らしい。シカゴの若手(そうでもないのかな)ブルースマンで、これほどぐっと来る人はいない。
最近、小川国夫(今は没後に発見された未完の作「動員時代」)を読んでいるが、疲れると片岡義男を手に取ったりもしている。10代の時さんざん読んだが(世代的にはドンピシャです)、手元にほとんどなくなってしまった。そこで、古本で「マーマレードの朝」を買った。角川文庫の赤い背表紙が懐かしい。「パステルホワイト」のドライな叙情性、30年若返る気になる。でも懐かしいばかりではない。主人公は37歳。かつて目も眩むほどの年長者の話として読んでいたが、今は若い人の物語として読んでいる。不思議な読書体験です。片岡義男は大ブームが過ぎた後も、日本語の表現についての根源的な問い掛けを含む論考や、文房具についてのエッセイなど、僕が惹かれるものを時々発表しているから、読者として縁が切れることなく来た。小説ももっと再評価されても良い。「ロンサムカウボーイ」「よい旅を、と誰もが言った」などのアメリカものは特に素晴らしく、褪色とは無縁な魅力がある。