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大野木一彦のJOURNAL・ブルースハープ・ライブ・レッスン情報

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2015年 11月 10日

JOURNAL

ちょっとライブ・スケジュールに間が出来ているが、レッスンしたり、ライナーを書いたりはしている。11月終盤には小林万里子さんの仕事があり、店から「OA的なバンドをあと二つ呼んで、ついでにライブ全体の仕切りを任せます」と言われ、良い機会だからと教え子さんを二人誘った。片方は自分のバンドがあり、もう一人は兄弟にベテランギタリストがいるのであっという間に、熟練の上手い人ばっかりのバンドが出来た。一生懸命に練習されている。

その昔、酒の席で文学談義になり川上弘美って良いよね、的なことを言ったらそこにいた女性に「ええっ」とのけぞられた話は前に書いた。確かに好き嫌いはあると思うし、僕の場合彼女の作物を読んでも元気にはなかなかならない。それでも実に上手い作家だと思う気持ちは変わらない。なぜこんなことを書いているかと言うと、この夏、東京に行った時、終電間際の東荻窪の駅で、ある男女二人連れを見たからである。40前後に見える女性が、後ろを振り返り「センセイ、電車に乗り遅れちゃいますよ」と言っていて、それに対し、後方からゆったりとした足取りで歩いて来る初老の男性は鷹揚に笑って頷いていた。二人とも随分酒が入っているようで、顔が紅潮していた。彼らがどういう間柄なのかは勿論判らない。でも僕は、ああ、リアル「センセイの鞄」だなあ、と心で独り言を言いながらその傍を通り過ぎた。確かに「先生」ではなく「センセイ」と聞こえたし、有名俳優に演じさせて映画化するよりずっと重たいリアリティがあると感じた。・・・まあ、それだけの話です。

先日、若い人とパブロックの話をしてから、ルー・ルイスが懐かしい。パブロックというのは俗称だが、要するにイギリスで、パブなどで演奏していたバンド達、ということだ。ルー・ルイス、Dr.フィールグッド、ビーズ・メイク・ハニー、チリウィリ&レッドホット・ペッパーズ、ルーモア・・・。多くのバンドが黒人音楽をルーツとして、自分たちなりの黒っぽい音を追求して奮闘していた。僕もそういう風に黒人音楽に向き合って音楽をやりたい、などと思った。パブロックには随分影響されたものだ。ルー・ルイス・リフォーマーの「Save The Wail」が聴きたくなったが、もうCDが簡単には見つからない。長い間聴いていないのできっと奥のほうにしまいこんでしまっているのだ。この人の「Mr.Bartender」を僕はスタジオで吹いたことがある。ライブでも一度くらいやっただろうか。キーはA、ハープはD。ヤマハのPA用のマイクと、マリンバンド。アンプリファイドしたハーモニカの音を自分で出したい、ただそのためだけにスタジオに入っていた。マイクをアンプに突っ込んでハウリングの具合を確かめて、何で、レコードみたいに大きな音が出せないのか、といつも悩んでいた。悩みながらも胸は喜びに昂ぶっていた。その時の年齢分以上をさらに生きた今、何と視野の狭い日々であったかと思う。しかしやはり濃密で得難い時間を生きていたとも実感する。
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by nogioh | 2015-11-10 23:29


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