岡崎京子の漫画「リバーズ・エッジ」が実写映画化される。岡崎はつげ義春と並んで、大人になってから大きな衝撃を受けた漫画家だ。一番好きなのは「チワワちゃん」という短編だが、リバーズ・エッジも実に強烈で、読んだ日の晩は眠れなかったほどだった。読んだのは20数年前だ。当時、それまで体験した事のない規模の精神の危機的状況にあった僕は、そのどん底から何とか這い上がる為に、哲学書を読み漁っていた。60年代以降の新し目の哲学、デリダとか、ドゥルーズとかクリスティバにも惹きつけられていた。チワワちゃんにも、リバーズ・エッジにも、そういうフランスの哲学者たちの難解な本と同じことが書いてあると読んですぐに感じた。大江健三郎、筒井康隆、二人よりひと世代下の高橋源一郎や村上春樹ら小説家もそういう思想潮流に敏感に反応した作品をいくつも書いていたが、読んだ鮮烈さでは岡崎京子の方が上だった。天才だと思った。今の若い人が、映画を観て、さらに原作を読んでどんな感想を持つのか聞いてみたい。