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2020年 02月 27日

JOURNAL

古井由吉さんが亡くなった。たった今訃報に触れて寂しく思っている。コメディアンで作家の某氏がこの作家を敬愛していて、メディアで名をよく挙げていた。宣伝効果は大きいのだろうが、果たして知名度はどの程度高まったのだろう。
だいたい読んだと思うが衝撃の大きさでは「夜明けの家」とエッセイの「魂の日」。あと講談社文芸文庫に入っている自選短編集「木犀の日」は古井氏の文学の真髄に触れるのに格好の一冊だと思う。僕にとってこの作家は前後期に分けると後期のものに特に打たれた。大江健三郎も、一般的には初期作品の人気が高いが、僕は「同時代ゲーム」以降の10年くらいの作品に衝撃を受けた。たぶん生涯消えないくらいの衝撃だ。小川国夫はどちらかと言えば初期。もちろん後期も素晴らしいが「若潮の頃」を図書館で借りて読んだショックは大きかった。
 音楽を聴いて自分の歴史のある瞬間を思い出すことはよくある。その時期に特によく聴いていた、ということだ。本でもそれはあって(数は少ないが映画でもそういう体験はある)、明確なある時期、限定的に耽溺していた書物と言うものがある。尾崎一雄や藤枝静男、上林暁など私小説の作家ばかり読んでいた時期もあるし、フランスの哲学書しか読めなくなっていた時期もあった(どこまで理解できていたかはまた別な話だ)。古井氏は書店で見かければ手に取ると言う感じで、長く作品を追って来た人で、和洋合わせてそういう作家が何人かいる。そのうちの何人かは故人で新作はもう出ない。享年82歳。年を重ねるごとに凄みが増して、誰も到達しえない場所に行った作家だった。


by nogioh | 2020-02-27 14:08 | Comments(0)


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