森内俊雄「骨の火」(講談社文芸文庫)。異様な緊迫感。宗教的挫折と官能と転落の生についての微細な描写の長い蓄積。時々びっくりするほど下世話な言いまわしが出てくる。発表からの二十年の時間のせいではなく計算なのだろう。重たいのにひたすらにサスペンス。高い物語性と文学性の圧倒的昇華。一時はまりにはまった色川武大の「狂人日記」や、「罪と罰」に連なる感銘でした。主軸になる火をめぐる聖書のイメージはメルヴィルも思い出した。僕はキリスト者では全然ないが、耽溺といっていいくらい小川国夫にのめりこんだこともあり、やはり関心があるのだろうなあ。