ジョニ-・ダイア-featマーク・ハメル「Rolling Folks Revisited」マディー・ウォーターズの、王道からはやや外れた選曲のカヴァーアルバムは、ありそうで、実はなかったのではないか。ヴォーカルに徹したジョニ-の、強くマディーを意識した歌いっぷりと、サポートするマークとブルースサヴァイヴァ-の原曲に極めて忠実な演奏。しかし完全コピーではない。ベテラン達が自ら勝ち得た独自のスキルをちらちらと挟み込んでいる。そこが憎い。サンフランシスコでのマークさんのギグでセッションさせてもらった時(彼の青いラスキンのマイクとヴィクトリアのアンプで交互に吹いた)のこと。ここでもやはりマディーの「Blow Wind Blow」をやったのだが、「イントロは俺が」といって、彼は1953年のチェスのスタジオを再現するような、ウォルター・ホ-トンそのままのフレーズを、ちょっとだけ変えて吹いてみせた。完全コピーなど今更、といったプロの驕りとは対極のその態度、と僕は感じている。要するに、原曲制作当時の録音状態の悪さや、プレイヤーのちょっとしたミス、偶発的な楽器のコンディションの悪さなどによる、古いレコードならではの「惜しさ」を補完しているのだ。さんざんコピーを繰り返して尚溢れんばかりの敬愛をこめて。「ブルースが帰ってきた!ハレルヤ!」と、これはリック・エストリンが寄せた賛辞。僕もこれを繰り返して、このアルバムが多くのブルースファンに聴かれることを願う。