吾妻ひでお「失踪日記」があまりの傑作だったので、「うつうつひでお日記」も読んだが、こちらは漫画家による完全な日記であり、いわゆる漫画としての作物ではない。しかし、よく本を読んでいる。特にSF関係が凄まじい。鬱っぽい時の逃避としての読書、というのはとてもよく理解できるし、十年ほども前の一時期の我が乱読の日々がまざまざと甦る。SFの新作からも遠く離れてしまった、との思いが湧き、ということで、新しそうなSF、グレッグ・イーガンの「しあわせの理由」を読む。筋立てとしては、思考する世界であり、扱う題材は最先端科学知識が溢れるばりばりのハードSF。全然判らないのもある。懐かしい探偵物の設定が効果的な「チェルノブイリの聖母」が面白い。
スティーブン・キングの映画化「アトランティスの心」を観る。六十年代のアメリカの田舎町で遊びまわる子役三人の姿と、豊かな自然の映像が美しい。ノスタルジックでほろ苦い佳品。