生徒さんの一人で、話すとトーンは静かなまま、いつもなかなか盛り上がる人と会う。聞き上手なのでつい喋りすぎる。
重松清「哀愁的東京」(光文社)。だいたい僕はちりちり頭が焦げそうになるものを好んで読み、その苦痛と紙一重の感覚を読書の喜びと思っているが、エンターテイメントも決して嫌いではない。そこに展開する物語を律している、暗黙の了承事、みたいなものに目を瞑り、つまり純粋に読者である事に徹すれば、やっぱりエンターテイメントは面白いし、楽だし、癒される。『哀愁的東京」は、後を引かないセンチメンタリズムに満ちた連作で、「哀愁」という言葉から僕が受ける印象よりも、もう少し重い都市生活者の孤独が、バランス感覚に優れた文章で綴られてゆく。とてもテレビドラマ的だし、あまりにもすぐ読めてしまって不安になる。でも何も残らない訳でもない。若い人に売れれば良いなと思う。本日の落語は「どうらんの幸助」