Van Morrison 「Poetic Champions Compose」。リリースから十九年、いまだに聴いて何かしら胸が騒ぐこの豊穣さは何ならむ。この次の「Avalon Sunset」も名盤で、冒頭のクリフ・リチャードとのデュエットから泣かせるが、澄明過ぎて、却って感傷的になってしまう。内省的な創作欲求の絶頂の混沌か、全体に薄曇った印象がある「Poetic...」の方が僕の精神の土壌にはよく合う気がしている。本人演奏の、別段テクニカルではないアルトサックスによる三曲のインストの、何と雄弁なこと!古代建築の白い石柱に木漏れ日が差すようなVanの旋律に、水そのものの清冽さで絡むニ-ル・ドリンクウォーターのピアノ。これが歌なのだと思う。