夜レッスン。若い人。宿題は良い感じに仕上がっていて、初めてのスーツみたいなぎこちなさに少し笑ってしまったが良かった。リック・ダンコの命日ですよ、と言われ。ああ、そうか、と思う。
もう9年経ったのだ。
今と違う場所に住んでいた僕は、リックの遺作となったアルバムを毎日聴いていて、その感想を手紙にして友人に送った。部屋の近くには自衛隊の駐屯地があって、彼らの就寝ラッパを聴きながら、僕はその手紙を書いたと記憶している。長い手紙だった。重信房子が捕まった時も、別の、画家の友人に僕は長いファックスをした。その頃は話したいことがあると、聞いてくれそうな人によく手紙を書いたりファックスを送ったりしていた。メールが生活に根付く前のことだ。PCも携帯も僕は手にするのがうんと遅かった。本当に話したいことは声に出して話すより、文字で伝えたいと思っていて、本当は今もその気分は変わっていないが、手紙はすっかり書かなくなった。
リック・ダンコがベースを弾いて歌っていたザ・バンドは、若い僕が全身で憧れた数少ないアイドルだった。格好も生き方も全部真似したいと思った。今でも一番好きなバンドだ。