2020年 01月 12日
重いものを一杯持ち上げたり運んだりする作業を2日続けてした後で、今日は十三でライブだった。心やすい、実力あるメンバーとのシンプルな音のライブでそれ自体はとても楽しかったが、マイクを握る手も立ちっぱなしの足も筋肉痛でうまく力が入らず困った。ヨシが歌ったナイトホウクの「Jackson Town Girl」は素晴らしかった。 先日南こうせつの「美映子」という曲がラジオから流れていた。岡本おさみの詞だったな、とすぐに思い出した。抒情に流れそうなメロディが言葉の力で強靭になっている。サイモンとガーファンクルの再結成について語る一節など当時小学生だった僕でも胸に迫るものを感じる。その時代を生きた観察者のリアルな目がそこにあるからだ。岡本氏は襟裳岬にしても、きみの朝にしても、学生運動の匂いがずっと付きまとう作詞家だった。少なくとも僕にとってはそうだった。作詞家と言うより、詩人と呼びたい人だったがご本人は歌の言葉に強いこだわりを持っておられたようだ。そういう作家が、沖縄に目を向けるのもとても自然で、ぐっと柔らかいトーンになったが、ネーネーズに書いた岡本氏のいくつもの詞も良いと思う。「されど、われらが日々」のような小説を読んである種の郷愁と胸を痛みを覚え、美映子やきみの朝を聴いて、社会と若者の関わりが今とは全く深さも濃さも違った時代の空気をかぎ取れる若者が今の世にどれだけいるだろう。少ないから、多いからどうということではない。ただ置き去りにされた空虚さのようなものを、何となく持て余すだけだ。同じく最近のラジオで、スマップの夜空ノムコウの作曲者の女性が、時は移ろう、ということを実感させる歌だ、と話していた。スガシカオの言葉の力に補強されたこの楽曲についての言葉だ。僕はこの作曲者の他の歌も、スガシカオも正直にいうとちゃんと聴いたことがない。しかし、夜空…からは、本当に刹那的なものを、情感をこめてスナップにした優れた言葉の力を感じる。ノムコウとか、やらかい、などという日本語の使い方にいつまで経っても抵抗感が拭えないのだが、そこを差し引いても。 #
by nogioh
| 2020-01-12 23:51
2019年 12月 19日
最近見た映画「希望の灯り」。ジャケットからして地味そうで実際物凄く静かで地味な映画だった。旧東ドイツの大きなスーパーマーケットが舞台で、そこに働く人々を描いた作品で、政治的な変遷に翻弄された庶民の姿をクールに、そして根本的には肯定的に描いた物語で好感が持てた。僕はこれの原作(クレメンス・マイヤーの短編。この人が脚本も書いている)も読んでいてそちらもなかなか面白かった。希望の灯り、というほど燦然と輝く事態には全然至らない、どちらかと言えば辛く単調な現実の中、つつましく輝くささやかな喜び、仄かな期待感、そういうものに目を凝らした物語。原題は「通路にて」。誰もが共鳴する部分はあるだろうと感じながら見ていた。でも、あまりにも何も起こらないので、この映画をつまらないと感じる人も沢山いるだろう。人生には物凄く沢山、色んな事が起こるが、ハリウッド映画的な場面などまずない。 もう一本、「ベン・イズ・バック」。サスペンス仕立てだが、シリアスでリアルな家族の話。アメリカ映画だが、こちらもいわゆるハリウッド的な派手な要素は皆無。現代アメリカのある暗い側面に正面から向き合ったヘビーな話だ。薬物中毒について、へえ、と思う事もあった。主人公ベンの母親役ジュリア・ロバーツの鬼気迫る熱演がまことに素晴らしい。 #
by nogioh
| 2019-12-19 13:00
2019年 11月 04日
TAKAGIMANこと高木竜一氏主宰による神戸のブルース・イベント、「Blues Before Sunrise Vol.12」に出演した。一番初め、このイベントの黎明期には僕は高木くんと今ほど親しい間柄ではなかったのだが、仲良くさせてもらうようになってからは、いつも呼んでもらっている。毎年の一番の楽しみと言っても良いくらいの行事だ。今回は出演者が全てバンドで、バンドの音の素晴らしさを体感できる内容だった。このイベントは、大きく外に開かれているのに、一本強く太い芯があって、そこに共鳴できるミュージシャンが集まってくるところにものすごく大きな意味がある。共鳴できて、しかも新鮮な切り口の他のバンドを観ることが出来るので学ぶことが多い。大変なイベントになっていると思う。高木君ありがとうございます。 SF作家の眉村卓氏が亡くなった。小学校から中学卒業くらいまでSFによって生かされていたと言っても過言ではない僕にとって、日本のSFの黎明期を作った作家たちが亡くなる感覚は、影響されたブルース・マンの死に直面した時と同じような感覚で、非常に寂しい。特に眉村氏は、この人のジュブナイルが一番最初の入り口だったので、ああ、という思いが大きい。SFブームに乗っかる形で夢中になっていたので、新作はどんどん文庫になったし、片っ端から読んでいた。一番のめり込んだのは光瀬龍だったが、眉村卓も常に大きな存在であり続けた。中学1年生の時、比較的大きな同人会に所属していた僕は、何人もの作家の講演が一度に聞けて、実作研究も出来るイベント(合宿)に参加した。眉村さんは、新井素子さん、荒巻義雄さんらと共にゲストで来られていて、僕はイベントの冊子にサインをもらった。緊張して何も話せなかったのを覚えている。ご冥福をお祈りします。 #
by nogioh
| 2019-11-04 23:48
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