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大野木一彦のJOURNAL・ブルースハープ・ライブ・レッスン情報

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2018年 12月 21日

JOURNAL

ビッグ・ウォルター・ホートンはたくさん聴いて無数にコピーしたハーピストの一人だ。そう言うと何となく意外そうな顔をする人もいるが紛れもない事実だ。取り分け「An offer you cant refuse」は昔から、そして今も彼の最高傑作だと思っている。初めてアナログ盤で聴いた時の衝撃はずっと忘れられないだろう。音が悪いし半音キーがずれていてコピーしようにもハーモニカがなく慌てて買いに走った記憶がある。キーの合うハーモニカを入手しても結局若い僕の手に負えるプレイではなかった。演奏を始めて、最初の激しい無力感を味わったのはこのアルバムによってであった。遥かに時は経ち、阿佐ヶ谷のBハウスでS木保、T-ス〇ム両氏とこのアルバムを聴いて盛り上がったのはつい数年前のこと。この夜のこともずっと忘れないと思う。

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# by nogioh | 2018-12-21 23:52 | Comments(0)
2018年 12月 16日

JOURNAL

20年以上前、朝日新聞で連載していた「悲しみの港」が小川国夫との出会いだった。身辺あわただしく、色んな物事が変化しつつある時期で、こういうものをその時の自分が欲していたということだと思う。いわゆる内向の世代、と呼ばれるグループの一人として名前は知っていた。つげ義春の漫画に、一度、名前が出ていて、コマの一つに小川の初期作「アポロンの島」の単行本の絵が描かれていて、読んでみたい、と思っていたがそれでも手に取ることはなかった。ネットも普及しておらず(もう使っている人は大勢いたが、僕はそういうものに関心がなく、携帯すら持っていなかった)通販の本屋もまだない時代。普通の書店になかなか小川国夫は置いていなかったという事情もある。「悲しみの港」はすぐに作品世界に入り込んで抜け出ることが出来なくなった。翌日の新聞が待ち遠しかった。新聞小説に心躍るなどそれまでなかった経験だ。連載が終わり、本になったものを買って改めて通読した。この人の小説は、ページを開いた時の字の並び、隙間など、ビジュアルがまず僕を惹きつけるのだと気づいた。当時新しいものが手に入りやすかったから、次は「跳躍台」を読んだ。こちらは短編集。これ以上ないほど彫琢された文章と、フランス、ギリシャ、そして大井川流域を結びつける作者の目の力、そして相変わらず本を開いた時の見た目の格好良さ。図書館で借り、古本屋をめぐり、その後しばらくは本当に夢中で読み続けた。
つい最近、川上美映子が数回にわたって村上春樹に行ったインタビューをまとめた「みみずくは黄昏に飛び立つ」を読み、村上が文章の「見た目」に言及している箇所を見つけた。見た目はやはり大事なのだ、と僕がかつて小川国夫の文学に対して感じた直感のようなものを補強してもらった気がした。川上がとても素晴らしいインタビュアーであることがこの本を読めばしみじみ分かる。対談集と言ってよいほどの濃度の高い対話が延々と続いて、非常に面白い本です。

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# by nogioh | 2018-12-16 23:02
2018年 11月 16日

JOURNAL

ボブ・ディランもスプリングスティーンも嫌いという人は何人も知っているが、僕はどちらも好きです。ついでに言うと、上記二人よりもっと否定的な人が何故か(何となくは分かるのですが)周りに多いジャクソン・ブラウンも僕は愛聴している。
アルバム「ハイ・ホープス」の初回限定盤にはDVDが付いている。イギリスでのライブなのだが、そこでスプリングスティーンは、84年の「ボーン・イン・ザ・USA」を全曲順番通りに、基本的なアレンジもきっちり再現して(もちろんくすぐりは一杯付け足され、ニルスやスティーブのアドリブも沢山入る)見せている。このライブの中では僕は「ダウンバウンド・トレイン」が最も心に染みた。No Surrender~Bobby Jeanの流れは当然心躍るのだが、若い時から僕は「ネブラスカ」が好きで、その世界を、ちょっとサウンドをゴージャスなバンドの音にして発展させたような「ダウン…」の暗い独白調の歌詞に激しく惹かれていた。朝までほっつき歩いてバイト代を使い果たし、急に降り出した激しい雨にずぶ濡れになりながら家に帰り着き、髪を拭き、風呂にも入らず着替えだけして泥のように寝る。目覚めるともう夕暮れで、何となく体がだるく、熱が出そうな予感がある。これは若いある日の記憶だが、これに似た日を重ねてその当時僕は暮らしていた。このままではどうしようもないな、と、当然時々考えた。そんな時にスプリングスティーンのこの曲を聴くと、心が、歌の世界を満たす憂愁に搦め取られるような感覚に陥った。そして不思議なことに同時に元気づけられもするのだった。将来どうにもならないとしてもハーモニカは続けよう、とか、気まずくなっていた誰かに今更だけど詫びの手紙を書こう、とか、あるいはもっと端的に、労働しようとか…、そういう思いが、くしゃっとひしゃげてしまった心の凸凹からじわっと滲み出すような心地になるのだった。

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# by nogioh | 2018-11-16 23:51 | Comments(0)